物忘れ専門外来

     
 
物忘れに関するQ&A
Q1:正常老化に伴う物忘れと認知症はどう違うのですか?

Q2:正常老化が急に認知症になるのですか?

Q3:どうやって診断するのですか?

Q4:認知症とはアルツハイマー病のことのなのですか?

Q5:認知症は治らないのですか?

Q6:家族(介護者)の注意することはありますか?

Q7:介護疲れはどうしたらいいのですか?

Q8:ただ介護しているだけなのに疲れるのはなぜですか?

Q9:認知症に効くクスリはあるのですか?
 
     


     
  明確な線は引けませんが、一つの目安として認知症の物忘れは「その言葉の概念自体がなくなる」のに対して、正常老化に伴う物忘れは「その言葉を言われると思い出せる程度」のものです。例えばテレビで郷ひろみが出演していたとします。正常老化の物忘れでは「アレ?この人誰だったかな?」との記憶障害に対して「この人は郷ひろみでしょ」と答えれば「あぁそうそう、あの“Japan”歌ってた人ね」などと思い出すことができます。認知症の物忘れでは「誰それ?知らないわ私」という具合に郷ひろみそのものが頭から消えます。

<百才老人の特徴>
〜長寿症候群の特徴〜
(老人福祉開発センターの調査から)

1.若い時から病気にかかったことがない
2.若い時から普通の体格である
3.長寿の家系に生まれた者が多い
4.酒・煙草をたしまない者が多い
5.塩分は薄味傾向
6.魚・卵をよく食べる
7.女は男より長寿であるが、長寿者の中では女が男より日常活動、精神機能の低下が目立つ
8.聴力低下が顕著である
9.動脈硬化の程度は強くない
10.高血圧は少なく、血圧は正常または低い
11.脳卒中の既往は5〜7%にすぎない
12.血清コレステロールは高すぎず低すぎずの値を示す
13.免疫に関係の深いリンパ球、Yグロブリンはかなり高い
番外.マイペースであること
  (老いても子に従わない)2002年 敬老の日
 
     


     
  恐らく近い将来認知症になるであろう老化した脳を持つ方を軽度認知症(MCI)と言います。軽度認知症は5年後に約50%が認知症になるという報告があります。軽度認知症の段階で専門治療をすると将来認知症になるのを遅らせることができます。先に天寿を全うすれば一生ボケなかった(認知症にならなかった)と言えます。軽度認知症の段階では物忘れや理解力の低下があっても日常生活は普通にできます。本人は「日頃から物忘れがひどい」と気にしていても周囲の人は「年のせい」として放置することが多いようです。できるだけ早く専門医受診をお勧めします。  
     


     
  認知症を専門に診ている医療機関では、一般的に脳MRIまたはCTの読影と神経心理学的検査及び家人(一緒に住んでいる方)からの問診により診断します。  
     


     
  認知症とは記銘力障害と認知障害(失語、失行、失認、実行機能障害の4つのうち1つ以上)を認め、日常生活に支障が出た状態を示す言葉であり、その種類としてアルツハイマー型が約50%、脳血管型が約30%、レビー小体型が約10%、その他のものがあげられます。  
     


     
  残念なことに現在のところ認知症を治す治療は見つかっていません。早期に見つけてそれ以上進行しないようにするのが大切です。ただし、甲状腺機能低下や慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍、うつ病、低血糖などで認知症とそっくりな症状が出ることがあります。これらの多くは原因を取り除けば治ることが多いです。  
     


     
  最近、以前より頑固になったなど、その人の短所が際立ってきた場合(性格の尖鋭化)、脳血管性認知症の可能性があります。特に他の記銘力や認知機能に目立った障害を認めず、家族も昔からの性格だから仕方がないと放っておく場合があるので注意を要します。それに対してアルツハイマー型はその人の持ち味(長所)が無くなってきます。記銘力障害や認知機能低下も家族や周囲の人からみて異常だとわかりやすいです。何か今までとは違うと思えば、本人を怒らせないように専門の医療機関受診を勧めます。本人が嫌がる場合は家族が「私、最近からだの具合が悪いから母さん一緒に病院についてきて」などと言うのも一つの方法です。  
     


     
  介護者のメンタルヘルスは深刻な問題です。肉体疲労は2〜3日で回復しやすいですが、精神疲労は2〜3ヶ月以上回復するのに時間を要すると言われています。できるだけ介護者が介護を忘れて一人で自由に遊べる時間を努力して作るのが必要です。そのために他の家族や介護サービスを利用することが必要です。また言語的疎通は認知症の方は苦手になるので、非言語的コミュニケーションが大切となります。具体的にはアイコンタクトやボディータッチ、身振り手振り、笑顔、話し方などです。介護者がくつろいだ雰囲気をかもしだしていれば認知症の方も安心し、周辺症状(被害妄想やせん妄、暴言・暴力、介護への抵抗等)が減ります。逆に介護者が認知症の方に苦手意識を持つと認知症の方はその雰囲気を察知して、態度は硬化し、さらに介護に非協力的となり悪循環にはまります。ご注意下さい。  
     


     
  認知症の方の会話や話題は知的興味をそそるものではなく、同じ質問の繰り返しや持続的なうめき、泣き叫び、そして混乱して要領を得ない返答であることが多いため、介護者は苛立ち、退屈感を感じ、物理的には大したことをしなくても脳はかなり疲弊します。長期介護となればなおさらです。介護者は自分に優しく、自分がうれしい、楽しい、はしゃいでいる時間を増やす努力が必要です。そうしないと介護者が潰れて共倒れになる可能性もあります。どうぞご注意下さい。  
     


     
  現在のところ認知症の中核症状を良くする薬はありませんが、アリセプトという薬が認知症の進行を抑えるだけでなく脳神経細胞が死んでゆくのを抑える作用もあるのではないかと言われています。
 周辺症状には睡眠薬、精神安定剤、抗うつ剤、抗精神病薬などの中枢神経抑制剤を投与するのが一般的です。ただし、これらの中枢神経抑制剤は副作用に注意を要します。中核症状がかえって悪くなったり、ふらつき、転倒、便尿失禁、嚥下困難、意識もうろう、暴言暴力、ひどい方は心不全や発熱、筋強剛、腎不全などとなることがあります。このリスクを考えると漢方を周辺症状に投与するのも1つの方法だと思います。